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2021.06.14 桐谷健太コメント到着!




桐谷健太コメント

 出演のお話があったときは、まず、「つながったな」と感じました。抽象的な表現でわかりづらいと思いますが、これまでの自分の思い、経験してきたこと、三池崇史監督を含め人との関係など、直感的につながった、と感じました。
 黒澤明監督作品にも思い出があります。小学生の時に通っていた塾の先生がとてもいい先生で、ある日、「今日は勉強をやめてみんなで今上映している『七人の侍』を観に行こう」とおっしゃったんです。ところが僕は行けなくて、なぜ行けなかったのかは覚えていないんですけど、子ども心に、「これは絶対観ておくべきやった」とずっと引っかかっていたんです。それで後に大人になってからレンタルビデオで黒澤作品を観るようになって。どれも、その時代にしか映せない何かがあり、その時代に生きていた人たちエネルギーがあふれているすばらしい作品だなと感じていたんです。『醉いどれ天使』もまさしくそう。ですから、今回の舞台化にあたっては、そのエネルギーに負けないように、いや、むしろ超える気持ちで臨まないといけないだろうなと思っています。ちゃんと生きて帰れるのかというくらい(笑)、エネルギーを出さなければと。
 松永は戦争の生き残りで、なぜ自分は生かされているのかと考え続けています。おそらく現代ではほとんどの人が、どこか生きている事は当たり前で、その上で自分がしたいことや夢は何かと悩んだりしているけれど、あの時代の人たちは生きていること自体が当たり前じゃなく、生きるために生きていたのではと感じます。1日1分1秒がものすごく濃かったのではと。そのうえ戦場で仲間が死んでいくのを目の当たりにしていれば、僕らが想像する以上のトラウマを抱えているでしょうし。だから僕自身も、いろんな方に当時の話を聞いたりしながら、松永がどう感じて生きていたのかを追求したいと思っています。つらい思いにもなるでしょうけど、自分のなかでしっかり松永を膨らませて、稽古に臨みたいですね。
 三池監督は、今あるものに固執しすぎないというか、自由度の高い方です。ですから、稽古で日々変わっていく可能性は大きいだろうなと思っています。もしかしたら本番中でもガラッと変わるかもしれない。どうなっていくのか楽しみにしていますし、どうぶつかっても反応してくださる方なので、思う存分ぶつかっていくつもりです。それも、新しい桐谷健太を見せるということではなく、松永として生きて松永を野放しにするという感覚でやってみたい。共演の方とのお芝居でも変わっていくと思うので、本当に楽しみです。
 お芝居のうえで最もぶつかることになるのが、真田役の高橋克典さんです。お芝居で絡むのは初めてですが、一緒にお食事をしたり何度かお目にかかっていて、やさしい笑顔の方だという印象が強いので、ぶっきらぼうで口は悪いけれども実は情が深い真田に、すごくシンクロするなと思っています。松永としてはそこに飛び込んでいきたいけどいけなかったり、飛び込んでみたもののやっぱり出ていかざるを得なくなったりするので、その複雑な関係を、高橋さんとなら面白く表現できるのではないかと思っています。
 舞台版の脚本は映画では描かれていない部分まで書かれていて、映画の答え合わせをしてくれているように思います。といっても、押しつけがましい答えではなく、観た人それぞれに感じ方が違って、すっと染み込んでくるようなものになっています。それが生の波動で伝わることで、劇場を出たら、空の見え方が違って見えたり誰かに会いたいと思ったり、何か変わったなと思ってもらえるはず。そのことをお約束できるよう、僕らは惜しみなく力を出したいと思います。